第6回 準備するもの – Raspberry Piシリーズ編

今回はクレジットカードサイズのRaspberry Piシリーズに必要な機器を説明します。

Raspberry Pi Zeroシリーズについては次回の記事で説明します。また、Raspberry Pi 400は補足回で説明します。

目次

説明内容

Raspberry Piシリーズで必要な機器について、「デスクトップタイプ」と「リモート接続タイプ」に分けて説明します。最初はデスクトップタイプに必要な機器類です。

デスクトップタイプに必要な機器

必要な機器の説明を以下の番号順で説明します。

デスクトップタイプ必要機器

1. ラズベリーパイ本体関連

ラスベリーパイの本体とアクセサリについて説明します。

本体

Raspberry Pi 3 Model B & 4 Model B

一般的な電子工作が目的の場合は「Raspberry Pi 3 Model B」または「Raspberry Pi 3 Model B+」で問題ありません。例えば、ホームオートメーションシステムを構築して、家電を制御したり、センサでデータ収集する程度でしたら性能はそれほど要求されません。ただし、カメラで撮影した画像を機械学習で画像認識するなど、ある程度負荷がかかる処理をさせたい場合はRaspberry Pi 4の方がパフォーマンスは上がります。

なお、公式サイトでは「Raspberry Pi 3 Model B/B+」は「少なくとも2026年までは生産」という案内がされています。早ければ2026年で生産終了となりますが、すぐに使えなくなるわけではなく、OSはしばらくサポートされますので当面使用できると思われます。ただ、現時点で生産終了案内が出ていますので、気になる方は「Raspberry Pi 4 Model B」を選択された方がよいと思います。(とはいっても4もいずれ生産終了になりますので、あまり気にしても仕方ないですが…)

電子工作以外にもラズベリーパイを通常のPCのように使いたい場合は、なるべく性能が高い方がよいので「Raspberry Pi 4 Model B」をおすすめします。「Raspberry Pi 4 Model B」には、メモリが2G、4G、8Gタイプのものがあります。アプリをいろいろ使用したい場合は4G以上あった方が快適に使用できます。

ある程度の価格差がありますのでどちらにするか悩みますが、用途に合わせて選んでみてください。

ところで、通販サイトなどをみるとRaspberry Piの製品名のあとに「element14版」「RS版」「OKdo版」などが書かれていることがあります。さらに、同じ製品でもこの表記が違うと価格が異なることがあります。この背景について説明します。

ラスベリーパイは、イギリスのラズベリーパイ財団以外に、「element14社(Premier Farnellの子会社)」「RSコンポーネンツ社(製造はOKdo社が担当)」が製造・販売を行っています。

異なる会社が生産していますので、当然ながら生産コストは異なります。そのため生産会社によって若干製品価格の差があります。傾向として「element14版」が安く、「RS版/OKdo版」が高い傾向にあります。これは「element14版」は中国の工場、「RS版/OKdo版」はイギリスまたは日本の工場(ソニー系列工場)で生産されているため、製造コストの差が製品価格に反映されているためです。

なお、RSコンポーネンツ社は2022年6月でラスベリーパイの製造・販売から撤退しました。今後はラズベリーパイ財団とelement14社の2社が製造・販売を続けることになるようです。

性能、品質面の差はほとんどないと思いますので、どちらを選択するかは好みの問題になると思います。(私はいずれのモデルも安い方を購入しています)

ヒートシンク

ヒートシンク

ラズベリーパイで負荷がかかる処理を続けたりする場合は、「ヒートシンク」をオプションで検討してみてください。

このシリーズで行うような電子工作や、通常の利用程度でしたらそれほど負荷はかかりません。

例えば、ラズベリーパイの設定を変更するとオーバークロックで(動作周波数を上げて)使用することができます。また、画像データ処理を大量に行う場合も継続的に負荷がかかります。このようなときはヒートシンクをつけることをおすすめします。

一般的なPCでも同じですが、ソフトウエア処理の負荷が高くなると、一部の部品(プロセッサなど)が発熱します。

Raspberry Pi発熱部品

あまり温度が高くなると部品にダメージを与えてしまうため、ラズベリーパイ自身が部品温度が高くならないように制御しています。具体的には、プロセッサ内部に温度センサが内蔵されていて、一定温度(85℃)を超えると、処理スピードを下げて(動作周波数を下げて)それ以上温度が上がらないようにしています。

ラズベリーパイで負荷が高い処理を行う場合やオーバークロックで使用すると、プロセッサ温度が高くなり、この制御が働いてパフォーマンスが落ちることがあります。これを避けるために、部品の熱を逃す「ヒートシンク」という部品を取り付けると効果があります。

ヒートシンクにもいろいろな種類があります。

Raspberry Pi 4 ケースファン(公式サイト)
https://www.raspberrypi.com/products/raspberry-pi-4-case-fan/

このようにファンがついたものはとても効果があります。ただ、ファンの電源はGPIOピンから取るようになっていますので、電子工作する場合は外す必要があり不便です。電子工作は一時的で、メインでデスクトップPCとして使用する、という場合はこのようなヒートシンクがよいと思います。

Raspberry Pi 4Bヒートシンクキット(秋月電子通商)
https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-16098/

また、このようにそれぞれの部品に取り付けるタイプもあります。電子工作をする際、GPIOピンの作業はしやすいですが、ファン付きのものよりは効果が低くなります。

ファンなしである程度効果を期待する場合は、以下のような本体を覆うヒートシンクがよいと思います。このヒートシンクはケースの役割もしていますので、別途ケースを購入する必要がなくなります。

Raspberry Pi 4 ヒートシンクケース ファンレス 黒(秋月電子通商)
https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-16425/

なお、ヒートシンクにはいろいろな色があります。こだわりがないようでしたら「黒」を選んでください。放熱(正確には「輻射」)の効率は色によって差があり、黒が一番放熱の効率が高いためです。

ケース

ラズベリーパイの本体の表も裏もこのような状態です。

Raspberry Pi部品面と裏面

電子工作では電線などの金属を扱います。その金属がラズベリーパイ本体の裏面に触れると、回路がショートするなどして故障の原因になります。そのため、以下のようなケースがあると安心です。

ケース

ただ、本体を完全に包むような製品の場合、GPIOピンにアクセスしづらくなります。また、空気の対流が起こりづらいため放熱の効率は悪くなります。ケースによってはカバーが外せるようになっているケースもあります。

カバー取り外しケース

また、負荷が高い処理をする場合などはケース兼ヒートシンクのような製品もあります。

ヒートシンクケース

ヒートシンクですので、色に特にこだわりがなければ放熱効率のよい黒をおすすめします。

ケースは必須というわけではありませんが、ケースがない場合は置き場所に注意するようにしてください。

2. microSDカード関連

microSDカード

microSDカード

microSDカードはラズベリーパイの記憶装置になりますので、ある程度の容量が必要です。公式サイトでは8GB以上が推奨されていますが、余裕を見て16GB以上のmicroSDカードがおすすめです。

なお、microSDカードは製品によってはラズベリーパイとの相性があるようです。最近は少なくなりましたが、一部製品では問題が発生するという情報もあります。以下のサイトは、各社SDカードのラズベリーパイとの互換性の情報のサイトです。

RPi SD Cards
https://elinux.org/RPi_SD_cards

2021年の製品で問題が報告されているケースもありますので、購入される製品が問題ないか、一度確認してみるとよいと思います。

なお、価格や入手のしやすさではキオクシア(旧東芝メモリ)の製品がおすすめです。

キオクシア microSDカード 16GB(秋月電子通商)
https://akizukidenshi.com/catalog/g/gS-15845/

SDカードリーダライタ

ラズベリーパイのOSは、最初WindowsPC/Mac/LinuxPCを使用してmicroSDカードにイメージを書き込む必要があります。

SDカードリーダライタをお持ちでない場合はリーダライタを準備する必要があります。microSDカードへの書き込みができれば問題ありませんので、以下のような安い小型のものを入手するとよいと思います。

SDカードラーダライタ

SDカードアダプタ

WindowsPCやMac、LinuxPCに搭載されているSDカードリーダライタを使用する場合、microSDカードに対応しているか確認が必要です。

もし、SDカードのみに対応している場合は、以下のようなmicroSDカード→SDカードアダプタが必要になります。

SDカードアダプタ

3. AC電源アダプタ

AC電源アダプタはラズベリーパイによって必要な容量、コネクタタイプが異なります。以下、製品別に説明します。

Raspbperry Pi 4 Model B用電源アダプタ

Raspberry Pi 4 Model Bの推奨電源は、「15W以上」です。またコネクタ形状はUSB Type-Cです。

Raspberry Pi 4用電源アダプタ

以下のようにワット数(W)の表示がない場合は、「OUTPUT」と書かれているところに電圧(V)と電流(A)の表記がありますので、それらを掛け算した値になります。このケースでは5.1×3.8=約19Wになります。

Raspberry Pi 4用電源アダプタ

これから入手される場合は、できればRaspberry Pi 4用の電源アダプタをおすすめします。以下、その背景と製品例を説明します。

Raspberry Pi 4の製品仕様では、必要な電源電圧は5Vと記載されています。そのため、5Vの電源アダプタを使用しても通常は特に問題なく使用できます。

ただ、Raspberry Pi 4は処理負荷が高い場合、多くの電力を消費します。そのとき、以下のように電源アダプタからラズベリーパイに多くの電流が流れて、配線で電圧が少し下がってしまい、ラズベリーパイ本体に5V電源を供給できなくなることがあります。

配線による電圧降下

そのため、Raspberry Pi 4向けの電源アダプタとして、先ほどの画像のように出力電圧を5.1Vに高めた製品が販売されています。

Raspberry Pi 4用の電源アダプタとして以下のようなものが販売されています。

スイッチングACアダプター Type-C 5.1V/3.8A(秋月電子通商)
https://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-14935/

ACアダプター 5.1V/3.0A TypeCコネクタ(スイッチサイエンス)
https://www.switch-science.com/catalog/5683/

Raspberry Pi 3 Model B/B+用電源アダプタ

Raspberry Pi 3 Model B/B+の推奨電源は、「12.5W以上」です。またコネクタ形状はmicro-Bです。

Raspberry Pi3用電源アダプタ

ワット数(W)の表示がない場合は、「OUTPUT」と書かれているところに電圧(V)と電流(A)の表記がありますので、それらを掛け算した値になります。このケースでは5.1×2.5=約13Wになります。

Raspberry Pi3用アダプタ

以下のようにラスベリーパイ向けとして販売されているものがあります。

スイッチングACアダプター MicroB 5V/3A(秋月電子通商)
https://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-12001/

ACアダプター 5.1V/3.0A MicroBコネクタ(スイッチサイエンス)
https://www.switch-science.com/catalog/2801/

4. Wi-Fiルータ関連

Wi-Fiルータはすでに利用されていると思いますが、電波が安定しない、などの場合は有線接続も可能です。

有線接続する場合は、一般的なネットワークケーブルで問題ありません。各製品の有線LANの対応規格は以下です。

製品 Raspberry Pi 3 Model B Raspberry Pi 3 Model B+
Raspberry Pi 4 Model B
対応規格 10/100Base-T 10/100/1000Base-T
対応ケーブル カテゴリ5 カテゴリ5e

5. HDMIディスプレイ・ケーブル

HDMIディスプレイ

各製品のHDMI解像度は以下の対応となっています。お持ちのディスプレイがあれば利用できます。

製品 Raspberry Pi 3 Model B
Raspberry Pi 3 Model B+
Raspberry Pi 4 Model B
最大解像度 Full HD / 1080p(1920 x 1080): 1台 4K(3840 x 2160): 2台

ディスプレイサイズは大きい方が作業しやすいですが、私は小型(10インチ)のディスプレイを接続して使用しています。

10インチHDMIディスプレイ作業風景

デスクトップタイプとしてガンガン使うわけではないですが、ラズベリーパイのディスプレイでちょっとした作業をしたり、トラブル対応をすることがあるためです。普段はWindowsやMacからリモート接続して作業しています。

また、小型ディスプレイですのでそれほど場所を取らず、上のようにサイドキャビネットの上に設置しています。

10インチサイズのHDMIディスプレイはAmazonやなどで1万円程度で購入できます。

HDMIケーブル

HDMIケーブルのコネクタ形状は注意が必要です。

Raspberry Pi 4 Model B

Raspberry Pi 4 Model BのHDMIコネクタは「MicroHDMI」が採用されています。

そのため通常のHDMIディスプレイに接続する場合は、以下のような片側が「HDMI」(ディスプレイ側)、もう片側が「MicroHDMI」(ラズベリーパイ側)のケーブルが必要になります。

HDMI-microHDMIケーブル

Raspberry Pi 3 Model B/B+

Raspberry Pi 3 Model B/B+は、通常のHDMIケーブルが利用できます。余っているものがあれば流用できます。

HDMIケーブル

6. USBキーボード

USBキーボード

USBキーボードは通常タイプのもので問題ありません。

7. USBマウス

USBマウス

USBマウスも通常タイプのもので問題ありません。

8. その他小物

ラズベリーパイを使う場合、以下のようなACコンセントスイッチがあった方が便利です。

ACコンセントスイッチ

というのは、ラズベリーパイ側の電源はUSBコネクタですので、電源をON/OFFするたびにコネクタを抜き差しするのは面倒です。

Raspberry Pi電源コネクタ

そのため、以下のように電源アダプタをACコンセントスイッチと一緒に使用すると、コンセントスイッチで電源のON/OFFができます。

ACコンセントスイッチ例

デスクトップタイプ必要機器まとめ

以上がデスクトップタイプに必要な機器類です。最後に表にまとめます。

機材 Raspberry Pi 4 Raspberry Pi 3
Raspberry Pi本体
ヒートシンク 必要があれば 必要があれば
microSDカード
(16GB以上推奨)

(16GB以上推奨)
SDカードリーダライタ なければ購入 なければ購入
SDカードアダプタ 必要があれば 必要があれば
AC電源アダプタ 15W以上
コネクタはUSB Type-C
12.5W以上
コネクタはUSB micro-B
LANケーブル 有線接続する場合のみ。
なければ購入
有線接続する場合のみ。
なければ購入
HDMIディスプレイ なければ購入 なければ購入
HDMIケーブル なければ購入
HDMI – Micro HDMIケーブル
なければ購入
HDMI – Mini HDMIケーブル
USBキーボード なければ購入 なければ購入
ISBマウス なければ購入 なければ購入
ACコンセントスイッチ 必要があれば 必要があれば

リモート接続タイプに必要な機器

リモート接続タイプの機器構成は以下になります。

リモート接続タイプ必要機器

デスクトップタイプから、キーボード、ディスプレイ、マウスを除いたものが必要になります。

リモート接続タイプで必要となる、(1)から(4)と(8)はデスクトップタイプと共通です。

また、WindowsやMac、Linuxからリモート接続する必要がありますので、(9)のコンピュータが必要になります。

リモート接続タイプ必要機器まとめ

最後にリモート接続タイプの必要機器類をまとめます。

機材 Raspberry Pi 4 Raspberry Pi 3
Raspberry Pi本体
microSDカード
(16GB以上推奨)

(16GB以上推奨)
SDカードリーダライタ なければ購入 なければ購入
SDカードアダプタ 必要があれば 必要があれば
USB AC電源アダプタ 15W以上 (5V/3A以上)
コネクタはUSB Type-C
12.5W以上 (5V/2.5A以上)
コネクタはUSB micro-B
LANケーブル 有線接続する場合のみ。
なければ購入
有線接続する場合のみ。
なければ購入
ACコンセントスイッチ 必要があれば 必要があれば

更新履歴

日付 内容
2022.2.23 新規投稿
2022.3.2 一部情報補足
2022.3.10 リモート接続タイプの必要機器構成変更
2022.9.5 RSコンポーネンツ社撤退の記載を追記
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