大学の電気系の授業のとき「発電所から各家庭に電気を届けるために高圧線を使っているが、高圧線の周りの空間で電気エネルギーを伝えている」というような説明を受けた記憶があります。
たまに思い出しては「本当なのかな?」と思っていたのですが、AIが何か知ってるかもしれませんので、CluadeのFable 5に聞いてみました。

送電について質問があります。
大学生の時の強電系の授業で、「送電線で電力を送る時、電力は導体内ではなく導体の周りの空間で運ばれる」と聞いた記憶があります。
またどこかの記事で、「海底ケーブルで送電しようとしたところう、うまく送電できなかった」と聞いたこともあります。
実際、電線で電力を送る場合、電力は導線の周り空間が使われているのでしょうか?
質問したところ、いきなり図を描いて説明してくれました。





なぜ「導線の中」ではないのか
2本の導線の間には電位差があるので電界 E が張り、電流が流れているので周囲に磁界 H ができます。S = E × H を計算すると、導線間の空間で S は電源から負荷へ向かう方向を向きます。
エネルギー流密度 S を導線周囲の断面全体で積分すると、ちょうど負荷で消費される電力 P = VI に一致します。これがポインティングの定理の帰結です。
一方、理想導体の内部では E = 0 なので S = 0、つまりエネルギーは流れません。
現実の導体には抵抗があるので表面にわずかな接線方向の電界(オームの法則の分)が存在しますが、そこで S を計算すると、導線の表面から内部へ垂直に入り込む向きになります。
この「染み込む」成分がジュール損、つまり導線の発熱にぴったり対応します。言い換えると、導体が受け取るエネルギーは自分が熱に変える分だけで、負荷へ届ける本体のエネルギーは導体の外の空間を通過していく、という描像になります。
この見方は、電子のドリフト速度の遅さとも整合します。導線内の電子はミリメートル毎秒のオーダーでしか進みませんが、スイッチを入れると負荷はほぼ光速(正確には線路の伝搬速度)で応答します。運ばれているのが電子の運動エネルギーではなく、導線に導かれた電磁界のエネルギーだからです。導線の役割は「エネルギーの通り道」ではなく「電磁界を目的地まで案内するガイドレール」に近いと言えます。
う〜ん、なんだか難しい回答ですが、要するに導体内は(電界がゼロなので)エネルギーは流れない、ということなんですかね。続けて海底ケーブルの話も補足してくれました。



海底ケーブルの話
おそらくご記憶にあるのは、交流での海底送電がうまくいかない話だと思います。これはまさに「エネルギーは導体周囲の絶縁体の中を伝わる」ことの実務上の帰結です。
海底ケーブルは、導体の周りを絶縁体が包み、そのすぐ外側に金属シースと海水(接地電位)がある、いわば巨大な同軸コンデンサの構造をしています。
架空送電線なら導体間の距離が数メートルあるのに対し、ケーブルでは電界が集中する絶縁層が数センチしかないため、単位長さあたりの静電容量が架空線の数十倍にもなります。
交流を流すと、この静電容量を毎サイクル充放電するための「充電電流」が流れ、これはケーブル長に比例して増えていきます。数十km程度の長さになると、ケーブルの許容電流の大部分が充電電流で食いつぶされてしまい、負荷に送れる有効電力がほとんど残らなくなります。これが「海底ケーブルで交流送電がうまくいかない」の正体です。
だから長距離の海底送電は直流(HVDC)で行われます。直流なら定常状態で充電電流はゼロなので、この問題が消えるからです。日本では北海道・本州間連系設備や紀伊水道直流連系がその例ですね。
ちなみにもっと古い話だと、1858年の大西洋横断電信ケーブルも同じ物理で苦しみました。こちらは電力ではなく信号ですが、ケーブルの大きな静電容量のせいでパルスがなまって伝送速度が極端に落ち、この解析からケルビン卿(W. トムソン)の電信方程式、のちの分布定数回路理論が生まれています。
海底ケーブルで送電ができないというのは、交流が送電できないってことなんですね。何かの記事で「海底ケーブルで送電できなかった」というのは、当時の人たちがことのことを知らずに実際に海底ケーブルを敷設して、送電してみたらダメじゃん!ってことになったんですかね。
さらに補足もしてくれました。



ひとつ補足
「エネルギーは空間を流れる」という描像は、ポインティングの定理という数学的に厳密な保存則に基づく標準的な解釈ですが、厳密に言うとエネルギー密度の「局在」の仕方には理論上の任意性が残る(観測できるのは体積積分と収支だけ)という議論もあります。
とはいえ、送電・伝送線路・アンテナ・導波管まで一貫して使える最も自然で実用的な見方がポインティングの描像で、強電の授業での説明は物理的に正当なものです。数年前に Veritasium がこのテーマ(「1光秒の長さの回路で電球はいつ点くか」)で動画を出して大論争になったのも、まさにこの話でした。
なんだかよくわかりませんが、直流の場合は海底ケーブルで送電できるというのは、エネルギーはどのように伝わっているのか謎なので聞いてみました。



海底ケーブルの場合、直流であれば電力伝送ができるとのことですが、直流ではどのように電力が伝わっているのでしょうか?



直流でも、エネルギーの運ばれ方は交流とまったく同じで、導体周囲の絶縁体の中を電磁界のエネルギーとして流れます。「静的な場」と「エネルギーが流れないこと」は別物、というのがポイントです。
直流の定常状態では E も H も時間変化しない静的な場ですが、S = E × H はゼロではありません。海底ケーブルの断面で見ると、導体と接地電位(シース・海水)の間の絶縁層に半径方向の電界 E が張り、導体電流の周りに同心円状の磁界 H ができます。この2つの外積を取ると、S はケーブルの軸方向、つまり負荷へ向かう向きになります。





定量的にもぴったり合う
同軸構造なら手計算で確かめられます。内導体半径 a、シース内半径 b、電圧 V、電流 I とすると、絶縁層内の半径 r の位置で
E(r) = V / r ln(b/a)
H(r) = I / (2 π r)
なので、エネルギー流密度は S(r) = E·H ∝ 1/r² となり、これを絶縁層の断面(a < r < b のドーナツ領域)で積分すると、送っている電力そのものになります。
つまり「V × I の電力」は、全量が絶縁層という数センチの隙間を通って運ばれている、と場の理論は主張していて、収支が完全に合うわけです。ちなみに S ∝ 1/r² なので、エネルギーの流れは導体表面のすぐ外側に集中しています。銅のすぐ外側の絶縁体こそが、実質的な「電力の通り道」です。
交流との違いは「場が変動するかどうか」だけ
前回お話しした静電容量の問題との関係で言うと、こう整理できます。
ケーブルの静電容量は直流でも同じだけ存在しますが、直流では通電開始時(あるいは電圧変更時)に一度だけ充電電流が流れて絶縁層に電界のエネルギー ½CV² を蓄えれば、それで終わりです。以後の定常状態では場は動かず、その静的な場を「舞台」としてエネルギーが軸方向に流れ続けます。交流では毎サイクルこの舞台を作り直す(電界を反転させる)必要があり、そのための充電電流が長さに比例して膨らむ、という違いです。エネルギーの輸送メカニズム自体は両者で共通で、直流はその舞台装置の維持コストがゼロ、と考えると見通しが良いと思います。
なお、乾電池と豆電球をつないだだけの回路でもまったく同じことが起きています。電池の周りから出た S の流線は空間を通って豆電球に集まり、フィラメント表面から内部へ垂直に流れ込んで熱と光になります。導線に沿ってエネルギーが「導かれている」だけで、通っているのは常に導体の外側、というのは直流・交流を問わない電磁気学の一般的な結論です。
なんだか十分に消化できませんが、要するに「交流のときは周囲の等価コンデンサにエネルギーが流れてしまい」「直流のときは等価コンデンサーはなくなるのでエネルギーが送れる」ってことなんですかね。
