今回から電子回路の説明に入ります。今回は説明だけですが、次回から実際に電子回路の動作を確認しながら進めていきます。
電子回路をじっくり学ぼう!
電子回路は基本からじっくり学んでいけば、一生使えるツールになりますよ。電子回路と聞くと何かすごい人工的な気がすると思いますが、中身は自然現象ですので、ソフトウエアのようにバージョンアップして仕様が変わったりすることはありません。いろいろと実験しながら身につけていきましょう!
とはいっても、電子回路の世界でも新しい部品がどんどん出てきますし、新しいことを覚えていく必要はあります。ただ、基本的なところの知識は変わることはありません。ということで、この入門記事で製作するもの以外にも応用が利くように、電子回路の基本的なところを詳しく説明していきたいと思います。
今回は電子部品と電子回路記号に関して以下の内容を説明します。
- LED
- 抵抗
- 電池・電源
- 実体配線図と電子回路図
- 電子回路図の電源の簡略化表記
LED
最初にLED(または発光ダイオード)と呼ばれている部品について説明します。
LEDは2本の線(リード線と呼びます)が出ている部品で、この両方のリード線に電圧をかけると(電池をつないだりすると)発光する電子部品です。
ただ、普通の電球のように電池などの電源に直接つなぐことはできません。
誤りのない程度にその理由を簡単に説明すると、上図のようにLEDと電池を直接つなぐと、電流がたくさん流れてしまい、LEDが壊れてしまうことがあるためです。
LEDを光らせる場合、流れる電流を制限する電子部品を接続する必要があります。電流を制限する電子部品として、「抵抗」や「定電流ダイオード」という部品が使われます。この入門シリーズでは、基本となる抵抗を使うことにします。抵抗についてはこの後のセクションで詳しく説明します。
なお、LEDを接続するとき、向きがあります。接続する向きを間違えると、壊れはしませんが光りません。そのため、部品をみてすぐにどちらかわかるようになっています。すでにお気づきかもしれませんが、片方のリード線がもう片方より長くなっていますよね。この長い方にプラス側、短い方をマイナス側につなぐと電流が流れて光ります。
このリード線の呼び方ですが、「長い方」「短い方」っていうのもちょっと、って感じですので、名前が付いています。プラス側に接続する長い方のリード線を「アノード」、マイナス側に接続する短い方のリード線を「カソード」と呼びます。
似たような名前なので、慣れないとどっちがどっちだったかわからなくなりそうですよね。「アノード」と「カソード」って言葉は覚えられるとして、あとはどっちか片方がわかればいいので、片方を連想で覚えるといいと思います。例えば、「カソード」→「過疎」→「少ないイメージ」→「マイナス」って感じです。自分で覚えやすいものを考えてみてください。
次に電子回路記号です。
電子回路を表現するとき、電子回路図が使われます。例えば以下はRaspberry Piの電子回路図です。
なんだかちょっとクラクラしますが、電子回路図の雰囲気がわかればそれでOKです!
この電子回路図を描く場合、各部品に電子回路記号が割り当てられていますので、それを使います。
LEDの電子回路記号は以下のようになっています。
LEDの電子回路記号では「アノード」の代わりに「A」、「カソード」の代わりに「K」と記載されることもあります。またその記号の形から、アノード、カソードはわかりますので、回路図上では記載されないことも多いです。
なお、LEDの回路記号は他にもいろいろな表現があります。三角形と棒、ピカッってする感じの記号があればLEDだと思って大丈夫です。
先ほどのRaspberry Piの電子回路図にも何個かLEDがありますので、時間があったら探してみてください。3ページ目と4ページ目にあるのですが、上の電子回路記号とはちょっと違ったものが使われています。
抵抗
次は抵抗です。抵抗はかなりいろいろな種類があるのですが、ここではごく一般的に使われているものを使用します。
抵抗は以下のようにリード線が2本でていて、何色かの色が塗られています。この色の部分は「カラーバンド」と呼ばれています。
ここではこのカラーバンドの数が4本のものを使用しています。抵抗の種類によってこのカラーバンドの数は異なります。
抵抗は、LEDのように向きはありません。どちら向きにつないでも大丈夫です。また、抵抗の値の単位はΩ(「オームと読みます)、というものが用いられ、数が大きいほど電流が流れにくくなります。
先ほどの色のバンドは、ただ抵抗をカラフルにしているのではないんです。この色のバンドで抵抗の値を表現しています。この色の読み方は後で説明します。
ところで、今回使用する抵抗は、1kΩ(1キロオーム=1,000オーム)と330Ωです。
この2種類では、1kΩの方が330Ωより数値が大きいので電流が流れにくい、ということになります。LEDを光らせる時の電流を制限するのは、330Ωの抵抗を使用します。なぜこの数字の抵抗を用いるかは、第20回の記事で説明します。
なお抵抗の値ですが、本当はこんな風に
文字で印刷してあればいいのですよね。でも実際の抵抗を手にとるとわかると思いますが、かなり小さいです。この小さい面積に文字を印刷するのも読むのも大変なので、色のバンドを印刷して抵抗の値を表現するようになったのかもしれませんね。
次に、抵抗の値の読み方を説明します。
カラーバンドが4本の抵抗は、抵抗値を表す3本のバンドと、精度を表す1本のバンドから構成されています。
精度を表すバンドは、一般的なものは金色です。金色はプラスマイナス5%の精度となります。他にも銀色、茶色、赤色があり、銀色はプラスマイナス10%の精度、茶色がプラスマイナス1%、赤色がプラスマイナス2%です。
また、精度を表すバンドがない場合はプラスマイナス20%となりますが、あまり見かけないですね。(そもそも20%誤差ってアリなんでしょうか…)
精度を表すバンドが確認できたら(金色を確認したら)、金色を右側にして抵抗をおきます。その状態で、色を読んでいきます。
この例では、
だいだい、だいだい、茶、となります。
この色は数字に対応しています。色と数字の対応は以下になります。また、この色と数字の対応は覚えておいた方がよいので、覚え方も参考に記載しておきます。
色 | 数字 | 覚え方 |
---|---|---|
■ 黒 | 0 | 黒い礼服 → 黒い礼(0)服 |
■ 茶 | 1 | 小林一茶 → 小林一(1)茶 |
■ 赤 | 2 | 赤いニンジン → 赤いニ(2)ンジン |
■ だいだい | 3 | 第三の男 → 第(だいだい)三(3)の男 |
■ 黄 | 4 | 四季 → 四(4)季(黄) |
■ 緑 | 5 | 五月みどり → 五(5)月みどり |
■ 青 | 6 | 青虫 → 青ム(6)シ |
■ 紫 | 7 | 紫式部 → 紫式(シチ=7)部 |
■ 灰 | 8 | ハイヤー → ハイ(灰)ヤー(8) |
□ 白 | 9 | ホワイトクリスマス → ホワイト(白)ク(9)リスマス |
「第三の男」というのはかなり昔の映画で、最近はテレビで放映されることもほとんどないので、若い年代の方はご存じないですよね。ということで、3は「オレンジの酸(3)味」なんてどうでしょうか。
なんてことは置いておいて、この覚え方はいろいろな種類があるので、ネットで、「抵抗 カラーコード 覚え方」などで検索してみてください。いろいろと面白い覚え方がありますよ。
やはりこれだけ覚え方がある、ということは素ではなかなか覚えられないからなんだと思います。自分は、この覚え方すら、なかなか覚えられませんでした。
それで、先ほどの色を数字にすると、
こんな風になります。
ここまでできたら、あとは抵抗の値にします。
やり方は、1番目の数字と2番目の数字をならべて、2桁の数字をつくります。その後に3番目の数字の個数分ゼロを並べます。先ほどの例では以下のようになります。
330、となりましたので、この抵抗は330オーム、ということになります。なお、3番目の数字がゼロ(色が黒)の場合はゼロはつけません。(ゼロがゼロ個、と言う意味になりますので)
今回の製作では、1kΩの抵抗も使います。この抵抗の色のバンド(カラーコード)はどうなるか上の例の逆を考えてみます。
まず、1k = 1000 ですので、1000を色のバンドに変換すればよいことになります。
はじめの2つの数字が1番目と2番目の色のバンド、3番目の数字はその後に続くゼロの個数になりますので、
このように色のバンドは、数字では 102 となります。あとは、この 102 を色に置き換えればOKです。
次に電子回路記号です。
抵抗の電子回路記号は以下のどちらかになります。上は旧JIS記号、下が新JIS記号です。最近では下の方が使われるようになってきましたが、なんか、上の方が「抵抗」って感じがするので、上の方もよく使われます。
今のところどちらを使ってもよいみたいですが、例えばヨーロッパ圏内ではよく使われているようで、企業がEU(ヨーロッパ共同体)圏に輸出するときに回路図をつけるときは、下の方の記号表記が必要のようです。
先ほどのRaspberry Piの電子回路図では、下の電子回路記号が使われています。確かにRaspbrry Piはイギリスで設計されていますので、下の方を使うんですかね。
電池・電源
この入門記事では電池は使用しませんが、必要な知識ですので説明します。
電源の単位はV(ボルト)を使用します。これはお馴染み、って感じですよね。
まず電源としてよく利用される電池ですが、その中でもよく使われている単三乾電池や単四乾電池には、使い捨てのものと充電式のものがありますよね。普段はあまり意識しないかもしれませんが、使い捨ての電池と充電式の電池では電圧が違います。
実際の電圧ですが、使い捨てタイプのものは約1.5V、充電式のものは約1.25Vです。また、使い捨てタイプの電池は「1次電池」、充電式の電池は「2次電池」と呼ばれています。
今後電子工作を進めていく上で、例えば5Vぐらいの電圧が欲しい時など、使用する電池のタイプで必要な電池の個数が変わってきますので、注意しましょう。
電池の電子回路記号は以下になります。
個人的には、プラスとマイナスが逆な気がします。。。
あと、電池を複数つなげるときは電池記号を連結して表現していることがあります。
ただ、電源としては電池だけでなく、他にも例えばUSB電源アダプタとかもありますよね。特に電源としては電圧が表現できればいいので、電池記号を一つだけ描いて電圧を併記する場合もあります。
ところで、上の図で5Vって書いてありますが、電池を使って5Vにする場合はどうすればいいのでしょうか。多くの電子回路は5Vといっても5Vぴったりが必要なわけではありません。
その電子回路の仕様によりますが、5Vちょうどの電圧が必要ない場合は、使い捨てタイプの電池は3本(=約4.5V)、充電式の電池は4本(=約5V)を使用します。
実体配線図と電子回路図
ここまでの説明で、LEDは電池に直接接続することはできず、流れ過ぎてしまう電流を制限するために抵抗が必要なことを説明しました。これからその接続方法を説明します。
LEDを光らせるためには、電源とLEDの間に抵抗を接続すればOKです。接続する場合にはLEDの向きに注意します。
このように接続すれば、安全にLEDを光らせることができます。なお、一般的なLEDであれば、電源は3V〜5Vぐらいが適当です。Raspberry PiのGPIOの出力電圧は3.3Vです。
このように実際の部品の絵を使って接続を表したものは「実体配線図」と呼ばれています。入門向けの雑誌・書籍では実体配線図で示されることが多いですが、実際の電子工作ではこのような実体配線図ではなく、電子回路図で示されることが多いです。この入門記事では、後半は電子回路図のみの説明が出てきますので、早めに慣れていきましょうね!
上の実体配線図を電子回路図にするには、上で説明したLED、抵抗、電源の電子回路記号を線で接続すればOKです。具体的には以下のようになります。
抵抗値の単位はΩですが、抵抗の記号に数字が入っていれば抵抗値だっていうことがわかるので、回路図には数字のみ書かれることが多いです。またLEDのAとKは電子回路記号から明らかですので書かれていないこともあります。
ところで、LEDと抵抗のつなぐ順番って変えるとどうなるんでしょうか。
この接続方法でも問題ありません。後の回で詳しく説明しますが、上の回路図で電子部品や線を流れる電流はどこも同じになります。電子回路を考えるときは、パイプを流れる水を想像すればだいたい合っています。上の図で水がパイプを流れているっていう感じで考えると、水の流れを制限するのはどこの位置で行っても変わらないのと同じです。
この場合、対応する電子回路図は以下のようになります。
実際に電子回路を組み立てるときに、電子回路図通りに接続すると場所の関係でうまく接続できない場合があります。このように部品の位置を交換してもいい場合は、電子回路と同じ効果があるように接続を変えることもできる、ということも覚えておきましょう。
電子回路図の電源の簡略化表記
これからいろいろな電子回路を見ていくと思いますが、上で説明したように電源を電池記号で書いてあることはほとんどありません。それではどのように省略するのか説明していきます。
対応がわかりやすくなるように、上の電子回路図を回転します(抵抗とLEDの順番は変わっています)。
この電子回路の電源以外のところは以下の赤枠の部分ですよね。
この赤枠の部分ですが、抵抗の一端は電源のプラス側、LEDのカソードは電源のマイナス側に接続されています。
このプラス側に接続する部分とマイナス側に接続する部分を別の記号で代替します。まずプラス側の記号は以下のようなものが使われます。
マイナス側の記号は以下のようなものが使われます。
これで回路を置き換えると以下のようになります。
簡単になりましたよね。でもこれだとマイナス側はいいとしても、プラス側は電圧が何ボルトかわからなくなってしまいます。そのため、このように電源を表現した場合は電圧も合わせて書くようにします。
この電圧の書き方ですが業界独特の慣習があります。例えばRaspberry PiのGPIOで使用されている3.3Vの場合、普通は「3.3V」と書きますよね。でも回路図やプリント基板上では「3V3」と書かれることがあります。「3.3」の後に「V」を書くのではなく、小数点の位置に「V」を書く方式です。このように書くと「3.3V」の場合は4文字ですが、「3V3」の場合は3文字となり、スペースが節約できます。また、5Vの場合でも、5.0Vを意味する「5V0」と書かれることもあります。
先ほどのRaspberry Piの回路でもたくさん出ていますので時間があったら確認してみてください。
次回は実際にLEDを光らせてみます。
更新履歴
日付 | 内容 |
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日付 | 内容 |
2015.11.3 | 新規投稿 |
2019.5.2 | 電圧表記方法の説明補足 |