EEPROM機能に関するチャレンジ課題に挑戦してみましょう!
前回プログラムの問題点
前回のプログラムで、タイマー時間を管理するtimerValue
変数は、EEPROMの読み出し、書き込みに合わせて1バイト(uint8_t
型)に変更していました。
timerValue
を秒にする場合、最大値は255ですので、255秒までしか設定できません。
保存できる値が255まで、というのはちょっと心許ないですよね。
timerValue
の単位が秒の場合は4分ちょっと、分の場合は4時間ちょっとまでの設定時間になってしまう、という問題点があります。
チャレンジ課題
そこで、チャレンジ課題として、現在1バイトで保存しているデータを2バイトで保存するように変更してみたいと思います。
EEPROMは1バイト単位で扱いますので、2バイトデータを扱うには、1バイト+1バイトのデータに分解して扱う必要があります。
ちょっとややこしいところもありますので、変更の概要をまとめておきます。
EEPROMデータ形式
EEPROMは1バイト単位の保存ですので、2バイトデータは1バイトごとに分解して保存する必要があります。
複数バイトのデータを1バイト単位の記憶領域に保存する方法は大きく分けて2種類あります。
一つは下位バイトから保存する方法(リトルエンディアン)、もう一つは上位バイトから保存する方法(ビッグエンディアン)です。
例えば、0x1122
という2バイトデータをEEPROMに保存する場合、下位バイトから保存する場合はEEPROMの初期データは次のようになります。
__EEPROM_DATA (0x22, 0x11, 0xFF, 0xFF, 0xFF, 0xFF, 0xFF, 0xFF);
また、上位バイトから保存する場合は次のようになります。
__EEPROM_DATA (0x11, 0x22, 0xFF, 0xFF, 0xFF, 0xFF, 0xFF, 0xFF);
どちらもメリットデメリットがありますが、特に決めてはありません。
そこで、今回はPICマイコンはなんとなく?下位バイトから保存するケースが多いので、最初の下位バイト、上位バイトで保存する形式(リトルエンディアン)にします。
EEPROMの初期データは5秒ですので、次のようにしたいと思います。
__EEPROM_DATA (0x05, 0x00, 0xFF, 0xFF, 0xFF, 0xFF, 0xFF, 0xFF);
EEPROMデータ読み出し
上のように保存したEEPROMデータの読み出しは、次のように行います。
最初にアドレス0とアドレス1のデータを、下位1バイト、上位1バイトデータとして読み出します。
uint8_t timerValueLower = eeprom_read(0); // アドレス0から下位バイトを読み出し
uint8_t timerValueUpper = eeprom_read(1); // アドレス1から上位バイトを読み出し
このように取り出したデータは、「(上位バイト×256)+(下位バイト)」で16ビットデータとして計算できます。なお、256倍は8ビット左シフトになりますので、プログラムは次のように書くことができます。
uint16_t timerValue = ((uint16_t)timerValueUpper << 8) | timerValueLower; // 2バイトを結合して16ビットのtimerValueへ代入
EEPROMデータ書き込み
EEPROMへのデータ書き込みは読み出しと逆の操作をすればOKです。
下位1バイトは0xFF
と論理積を取ればOKです。また上位1バイトは256で割り算してから0xFF
と論理積を取ります。
timerValueLower = (uint8_t)(timerValue & 0xFF); // timerValueの下位バイト
timerValueUpper = (uint8_t)((timerValue >> 8) & 0xFF); // timerValueの上位バイト
これで1バイトデータに分解できましたので、次のようにEEPROMに書き込みます。
eeprom_write(0, timerValueLower); // アドレス0に下位バイトを書き込み
eeprom_write(1, timerValueUpper); // アドレス1に上位バイトを書き込み
チャレンジ課題解答例
検討したコードを前回のプログラムに反映してみました。
なお、8ビットから16ビットに変更していますので、必要に応じて変数をuint8_t
からuint16_t
に変更しています。
/*
* PICマイコン電子工作入門 応用編 第15回
* チャレンジ課題解答例
* タイマー設定値をEEPROMに保存 (2バイト版)
*/
#include <xc.h>
// PIC12F1822 Configuration Bit Settings
// CONFIG1
#pragma config FOSC = INTOSC // Oscillator Selection (INTOSC oscillator: I/O function on CLKIN pin)
#pragma config WDTE = OFF // Watchdog Timer Enable (WDT disabled)
#pragma config PWRTE = OFF // Power-up Timer Enable (PWRT disabled)
#pragma config MCLRE = OFF // MCLR Pin Function Select (MCLR/VPP pin function is digital input)
#pragma config CP = OFF // Flash Program Memory Code Protection (Program memory code protection is disabled)
#pragma config CPD = OFF // Data Memory Code Protection (Data memory code protection is disabled)
#pragma config BOREN = ON // Brown-out Reset Enable (Brown-out Reset enabled)
#pragma config CLKOUTEN = OFF // Clock Out Enable (CLKOUT function is disabled. I/O or oscillator function on the CLKOUT pin)
#pragma config IESO = OFF // Internal/External Switchover (Internal/External Switchover mode is disabled)
#pragma config FCMEN = OFF // Fail-Safe Clock Monitor Enable (Fail-Safe Clock Monitor is disabled)
// CONFIG2
#pragma config WRT = OFF // Flash Memory Self-Write Protection (Write protection off)
#pragma config PLLEN = OFF // PLL Enable (4x PLL disabled)
#pragma config STVREN = OFF // Stack Overflow/Underflow Reset Enable (Stack Overflow or Underflow will not cause a Reset)
#pragma config BORV = LO // Brown-out Reset Voltage Selection (Brown-out Reset Voltage (Vbor), low trip point selected.)
#pragma config LVP = OFF // Low-Voltage Programming Enable (High-voltage on MCLR/VPP must be used for programming)
// クロック周波数指定
// __delay_ms()関数が使用する
#define _XTAL_FREQ 1000000
// EEPROM初期データ
// アドレス0にタイマー設定値の下位バイト、アドレス1に上位バイトの初期値を設定
// 次のデータは5の例
__EEPROM_DATA (0x05, 0x00, 0xFF, 0xFF, 0xFF, 0xFF, 0xFF, 0xFF);
void main(void) {
// PICマイコン設定
OSCCON = 0b01011010; // 内部クロック周波数を1MHzに設定
ANSELA = 0b00000100; // RA2ピンをアナログ、それ以外のピンはデジタルに設定
TRISA = 0b00001100; // RA2とRA3を入力、それ以外は出力に設定(RA3ピンは設定にかかわらず入力ピン)
// ADコンバータ設定
ADCON0 = 0b00001001; // RA2(AN2)をADコンバータピンに設定し、ADコンバータ機能をEbableにする
ADCON1 = 0b10000000; // 結果数値は右寄せ、ADコンバータクロックはFOSC/2、基準電圧はVDD
// ブザーをOFFにする
LATA4 = 0;
// タイマー設定時間をEEPROMから読み出す (2バイトに変更)
uint8_t timerValueLower = eeprom_read(0); // アドレス0から下位バイトを読み出し
uint8_t timerValueUpper = eeprom_read(1); // アドレス1から上位バイトを読み出し
uint16_t timerValue = ((uint16_t)timerValueUpper << 8) | timerValueLower; // 2バイトを結合して16ビットのtimerValueへ代入
// タイマー時間をLEDの点滅回数で表現する
//
// 動作開始後少し待つ
__delay_ms(500);
// 設定時間分LEDを点滅する
for(uint16_t i=0; i<timerValue; i++) { // iの変数型をuint16_tに変更
LATA5 = 0;
__delay_ms(200);
LATA5 = 1;
__delay_ms(200);
}
// 少しの間LEDをOFFにする
LATA5 = 0;
__delay_ms(800);
// LEDを点灯する
LATA5 = 1;
// スイッチが押されるまで、タイマー時間増減スイッチ処理を行う
while( RA3 ) {
// ADコンバータ読み取り
GO = 1; // 読み取り依頼
while(GO) { // 読み取り完了待ち
}
// ADRESの数値に応じてタイマー時間の増減を行う
//
// タイマー時間を減らすスイッチの処理(ADRESが250未満の場合)
if( ADRES < 250 ) {
// タイマー時間を減らす(マイナスにならないようにする)
if( timerValue > 0 ) {
timerValue--;
}
// タイマー時間をLEDの点滅回数で表現する
//
// 少しの間LEDをOFFにする
LATA5 = 0;
__delay_ms(500);
// 設定時間分LEDを点滅する
for(uint16_t i=0; i<timerValue; i++) { // iの変数型を uint16_t に変更
LATA5 = 0;
__delay_ms(200);
LATA5 = 1;
__delay_ms(200);
}
// 少しの間LEDをOFFにする
LATA5 = 0;
__delay_ms(800);
// LEDを点灯する
LATA5 = 1;
} else {
// タイマー時間を増やすスイッチの処理(ADRESが250以上750未満)
if( ADRES < 750 ) {
// タイマー時間を増やす
timerValue++;
// タイマー時間をLEDの点滅回数で表現する
LATA5 = 0;
__delay_ms(500);
for(uint16_t i=0; i < timerValue; i++) { // i の型を uint16_t に変更
LATA5 = 0;
__delay_ms(200);
LATA5 = 1;
__delay_ms(200);
}
LATA5 = 0;
__delay_ms(800);
LATA5 = 1;
}
}
}
// タイマー設定値をEEPROMに書き込む (2バイトに変更)
timerValueLower = (uint8_t)(timerValue & 0xFF); // timerValueの下位バイト
timerValueUpper = (uint8_t)((timerValue >> 8) & 0xFF); // timerValueの上位バイト
eeprom_write(0, timerValueLower); // アドレス0に下位バイトを書き込み
eeprom_write(1, timerValueUpper); // アドレス1に上位バイトを書き込み
// LEDをtimerValue分点滅する
for(uint16_t timer=0; timer<timerValue; timer++) { // timerの変数型をuint16_tに変更
// LEDを950ms消灯する
LATA5 = 0;
__delay_ms(950);
// LEDを50ms点灯する
LATA5 = 1;
__delay_ms(50);
}
// アラーム音を3回鳴らす
for(uint8_t i=0; i<3; i++) {
// ピッ
LATA4 = 1;
__delay_ms(70);
LATA4 = 0;
__delay_ms(70);
// ピッ
LATA4 = 1;
__delay_ms(70);
LATA4 = 0;
__delay_ms(70);
// ピーッ
LATA4 = 1;
__delay_ms(70);
LATA4 = 0;
// 1回分の音パターンの間を少し空ける
__delay_ms(800);
}
// LEDをPWM制御してスムーズな点滅制御をする
//
// PWM機能のピン割り当て設定
APFCONbits.CCP1SEL = 1; // PWM機能をRA5ピンに設定
CCP1CONbits.CCP1M = 0b1100; // PWM機能を有効、active-highに設定
CCP1CONbits.P1M = 0b00; // RA2ピンはGPIOに設定
// 周期とデューティーサイクルの設定
// 周期は1ms
// デューティーサイクルは100%から開始するので1msに設定
T2CONbits.T2CKPS = 0b00; // プリスケーラ値を1に設定
PR2 = 249; // 周期を1msに設定 (249 + 1) x 4 x 1us = 1000us = 1ms
CCPR1L = 1000/4; // デューティーサイクルを0.5msに設定
CCP1CONbits.DC1B = 1000 & 0b11;
// PWM制御スタート
T2CONbits.TMR2ON = 1;
// LEDをPWM制御
// デューテー比は10%〜100%の制御にする
while(1) {
// 100% -> 5%の制御
for(uint16_t duty=1000; duty>=50; duty--) {
CCPR1L = (uint8_t) (duty / 4); // 上位8ビット
CCP1CONbits.DC1B = duty & 0b11; // 下位2ビット
__delay_ms(1);
}
// 5% -> 100%の制御
for(uint16_t duty=50; duty<=1000; duty++) {
CCPR1L = (uint8_t) (duty / 4); // 上位8ビット
CCP1CONbits.DC1B = duty & 0b11; // 下位2ビット
__delay_ms(1);
}
}
// 以下の命令は実行されない
return;
}
更新履歴
日付 | 内容 |
---|---|
2017.7.30 | 新規投稿 |
2018.12.2 | 誤記訂正 |
2025.5.20 | チャレンジ課題解答例追加 |
PICマイコン勉強の為、いつも参考にさせて頂いております。
チャレンジ課題の考え方としてアドレス0,アドレス1のデータを1バイトとして読出し、その値をtimerValueに代入し、演算(足し算)。書込み時は、分割して1バイトデータずつ保存するといった感じでしょうか。1バイト以上読み書き可能なライブラリがあればよいのですが、解らず、もう少しヒントを頂けないでしょうか。
Wonderさま、
ご質問どうもありがとうございます。
考え方としては書かれています通り、EEPROMに書き込む際には2バイトのデータを1バイトずつにバラしてアドレス0とアドレス1に保存すればOKです。また読み出す際にはアドレス0とアドレス1の2バイトのデータを読み取り、それを16ビットのtimerValueに再現すればOKです。
これを実現するには掛け算と割り算を使用してもいいですし、ビット演算子を使用してもできます。一般的には以下のビット演算子を使用するケースが多いです。
>> (右に1ビットシフト)
<< (左に1ビットシフト)
ご教示ありがとうございます。
ビットシフトにて出来ました。また、256まで待てなったので下位4ビットを2ビットずつ分離し、EEPROMに読み書きも出来ました。ありがとうございました。
Wonderさま、
早速うまくいったとのことでよかったです!
情報がちょっと少なかったかな、と思ったのですが、C言語を使いこなされているようですね。2ビットずつ分割して、というのも面白いですね。色々と試して腕を上げていただければと思います!