今までの内容を踏まえて、タイマープログラムに割込み処理を実装します。
動作仕様
それでは今までの内容を元に、タイマープログラムに割込み処理を追加しましょう。
タイマー動作としては以下の仕様とします。
- スタートボタン(RA3ピン)が押されてタイマー動作開始後、タイマー動作中にスタートボタン(RA3ピン)が押されたら、タイマーカウントをリセットする(最初からタイマー計測をやり直す)
- タイマーカウントをリセットする際、タイマー時間をLEDの点滅数で表現する
プログラム構成
プログラムを作成する前に、プログラム構成といいますか、アルゴリズムをどうするか検討しましょう。
もう一度割込み処理の動作を復習すると、割込み関数はmain関数とは別に用意しておき、該当の割込みが発生したらmain関数の処理を中断して割込み処理を行う、というものでした。
今回、タイマープログラムに実装する処理内容は、割込みが発生した際にタイマーをリセットする、というものです。プログラム動作としては、割込みが発生したら → タイマーのカウントを元に戻す、という処理でうまくいきそうな気がします。でも実際にこのような実装をするにはちょっと工夫が必要です。
タイマー、つまり残り何秒かはmain関数でカウントしています。割込みが発生した場合、割込み処理関数でこのタイマーカウントをリセットすればいいのですが、main関数と割込み処理関数は直接変数(値)のやり取りはできない、という大きな問題があります。
割込み処理関数からmain関数内の変数を直接操作することができない場合、どうすればいいでしょうか。
このような場合は、両方の関数、つまりmain関数と割込み処理関数の両方から参照・操作できるような変数を用意します。このような変数をグローバル変数と呼んでいます。C言語の入門書に出てきますので、忘れてしまった場合は復習してみてください。
タイマーカウントのリセットは以下のようにmain関数と割込み処理関数の外側でグローバル変数を宣言して使用することにします。
プログラム動作の検討
次に、実際のプログラム動作を検討してみましょう。
グローバル変数として、現在のタイマー残り時間の変数を用意して、main関数でそのタイマー残り時間を1秒ずつ減らして、残り時間がゼロになったらブザーを鳴らせばよさそうです。
割込み処理側は、割込みが発生して呼ばれたら、そのグローバル変数のタイマー残り時間を元の値に戻せばよさそうです。ところで、どの値に戻せばいいでしょうか。元に戻す値は、EEPROMに書いてあるので、その値を読めばいいですが、EEPROMから読み出すのはちょっと時間がかかりますので、タイマー設定時間もグローバル変数にしておきたいと思います。
このような考え方で割込み処理によるタイマーリセットプログラムを実装してみます。
プログラムの実装
これまでの考え方でプログラムを実装してみます。
グローバル変数として、「timerValue」をタイマー設定値として、「timerCount」を現在のタイマー残り時間として使用します。
main関数はtimerCountをtimerValueから1秒に1ずつ減らしながらカウントします。割込み処理関数は呼ばれたらtimerValueをtimerCountに戻します。
なお、このような処理に変更しますので、main関数のタイマーカウントはfor文からdo-while文に変更しています。
なお、XC8コンパイラVersion2.00以降では、割り込み関数の書き方が変わっています。以下のプログラムはXC8コンパイラVersion2.00以降のものです。Version2.00より前のバージョンをお使いの場合は以下の変更をお願いいたします。
void __interrupt() isr(void)
を
void interrupt isr(void)
に変更してください。
以下、完成した割込み処理プログラムです。
/*
* File: main.c
* 変更履歴
* 2016.11.20: スイッチ制御部分を追加
* 2016.12.05: 時間計測とブザー制御部分を追加
* 2017.01.15: 設定時間が来たらLEDをPWM制御に変更
* 2017.07.29: 時間設定ボタン処理を追加
* 2017.07.30: EEPROMにタイマー時間の保存、読み出し機能を追加
* 2017.10.03: 割り込み処理追加(タイマー開始後にスイッチを押すと最初からカウントする)
*/
#include <xc.h>
// PIC12F1822 Configuration Bit Settings
// CONFIG1
#pragma config FOSC = INTOSC // Oscillator Selection (INTOSC oscillator: I/O function on CLKIN pin)
#pragma config WDTE = OFF // Watchdog Timer Enable (WDT disabled)
#pragma config PWRTE = OFF // Power-up Timer Enable (PWRT disabled)
#pragma config MCLRE = OFF // MCLR Pin Function Select (MCLR/VPP pin function is digital input)
#pragma config CP = OFF // Flash Program Memory Code Protection (Program memory code protection is disabled)
#pragma config CPD = OFF // Data Memory Code Protection (Data memory code protection is disabled)
#pragma config BOREN = ON // Brown-out Reset Enable (Brown-out Reset enabled)
#pragma config CLKOUTEN = OFF // Clock Out Enable (CLKOUT function is disabled. I/O or oscillator function on the CLKOUT pin)
#pragma config IESO = OFF // Internal/External Switchover (Internal/External Switchover mode is disabled)
#pragma config FCMEN = OFF // Fail-Safe Clock Monitor Enable (Fail-Safe Clock Monitor is disabled)
// CONFIG2
#pragma config WRT = OFF // Flash Memory Self-Write Protection (Write protection off)
#pragma config PLLEN = OFF // PLL Enable (4x PLL disabled)
#pragma config STVREN = OFF // Stack Overflow/Underflow Reset Enable (Stack Overflow or Underflow will not cause a Reset)
#pragma config BORV = LO // Brown-out Reset Voltage Selection (Brown-out Reset Voltage (Vbor), low trip point selected.)
#pragma config LVP = OFF // Low-Voltage Programming Enable (High-voltage on MCLR/VPP must be used for programming)
// クロック周波数指定
// __delay_ms()関数が使用する
#define _XTAL_FREQ 1000000
// 割り込み関数のプロトタイプ宣言
void __interrupt() isr(void);
// EEPROM初期データ定義
// アドレス0はタイマー設定値の初期値、残りはダミーデータ
__EEPROM_DATA (0x05, 0xFF, 0xFF, 0xFF, 0xFF, 0xFF, 0xFF, 0xFF);
// グローバル変数
unsigned char timerValue; // タイマー設定値(main関数の最初でEEPROMから設定値を読み出し、この変数に入れておく)
unsigned char timerCount; // 現在のタイマー残り時間(main関数ではこの値を減らしながらタイマーカウント。割込み処理関数では呼ばれたらtimerValueに戻す)
//
// メイン関数
//
void main(void) {
// PICマイコン設定
OSCCON = 0b01011010; // 内部クロック周波数を1MHzに設定
ANSELA = 0b00000100; // RA2ピンをアナログ、それ以外のピンはデジタルに設定
TRISA = 0b00001100; // RA2とRA3を入力、それ以外は出力に設定
// ADコンバータ設定
ADCON0 = 0b00001001; // RA2(AN2)をADコンバータピンに設定し、ADコンバータ機能をEbableにする
ADCON1 = 0b10000000; // 結果数値は右寄せ、ADコンバータクロックはFOSC/2、基準電圧はVDD
// 変数宣言
unsigned short timer; // 時間計測
unsigned short duty; // PWMのデューティーサイクル
unsigned short i; // for文で使う変数
// LEDを点灯する
LATA5 = 1;
// ブザーをOFFにする
LATA4 = 0;
// タイマー時間変数
// EEPROMに保存してある値を使用する
// timerValueは1バイトにしています
timerValue = eeprom_read(0);
// 設定時間を表現するために現在の設定時間を
// LEDの点滅回数で表現する
//
// ちょっと待ち時間を置いて、
__delay_ms(800);
// いったんLEDを消して、
RA5 = 0;
__delay_ms(500);
// 設定時間分LEDを点滅して、
for(i=0; i<timerValue; i++) {
RA5 = 0;
__delay_ms(200);
RA5 = 1;
__delay_ms(200);
}
// ちょっとの間LEDを消して、
RA5 = 0;
__delay_ms(800);
// LEDを点灯する
RA5 = 1;
// スイッチが押されたらタイマースタートする
// タイマースタート前にタイマー時間設定ボタンが押されたらその処理を行う
while(RA3){
// ADコンバータ読み取り開始
GO = 1;
// 読み取り完了待ち
while(GO);
// 読み取りが終わると結果の数値はADRESレジスタに入っている
// ADRESの数値に応じてタイマー時間の増減を行う
//
// タイマー時間を減らすスイッチの処理
// (ADコンバート値が250未満の場合)
if( ADRES < 250 ) {
// タイマー時間を減らす
timerValue--;
// タイマー時間をLEDの点滅回数で表現する
//
// いったんLEDを消して、
RA5 = 0;
__delay_ms(500);
// 設定時間分LEDを点滅して、
for(i=0; i<timerValue; i++) {
RA5 = 0;
__delay_ms(200);
RA5 = 1;
__delay_ms(200);
}
// ちょっとの間LEDを消して、
RA5 = 0;
__delay_ms(800);
// LEDを点灯する
RA5 = 1;
} else {
// タイマー時間を増やすスイッチの処理
// (ADコンバート値が250以上750未満)
if( 250 <= ADRES && ADRES < 750 ) {
// タイマー時間を増やす
timerValue++;
// タイマー時間をLEDの点滅回数で表現する
// 点滅制御方法は減らす場合と同じ
RA5 = 0;
__delay_ms(800);
for(i=0; i<timerValue; i++) {
RA5 = 0;
__delay_ms(200);
RA5 = 1;
__delay_ms(200);
}
RA5 = 0;
__delay_ms(800);
RA5 = 1;
}
}
}
// タイマー設定値をEEPROMに書き込む
eeprom_write(0, timerValue);
// RA3割り込み設定
IOCIE = 1;
IOCAN3 = 1;
GIE = 1;
// 点滅開始
timerCount = timerValue;
do {
timerCount--;
LATA5 = 0;
__delay_ms(950);
LATA5 = 1;
__delay_ms(50);
} while( timerCount );
// 割り込み禁止
GIE = 0;
IOCIE = 0;
IOCAN3 = 0;
// ブザーをONにする
LATA4 = 1;
// LEDをPWM制御してスムーズな点滅制御をする
// PWM機能のピン割り当て設定
APFCONbits.CCP1SEL = 1; // PWM機能をRA5ピンに設定
CCP1CONbits.CCP1M = 0b1100; // PWM機能を有効、active-highに設定
CCP1CONbits.P1M = 0b00; // RA2ピンはGPIOに設定
// 周期(1ms)とデューティーサイクル(0.5ms)の設定
T2CONbits.T2CKPS = 0b00; // プリスケーラを1:1に設定
PR2 = 249; // 周期を1msに設定 (249 + 1) x 4 x 1us = 1000us = 1ms
CCPR1L = 500/4; // デューティーサイクルを0.5msに設定
CCP1CONbits.DC1B = 500;
// PWM制御スタート
T2CONbits.TMR2ON = 1;
// LEDをPWM制御
// デューテー比は10%〜100%の制御にする
while(1) {
// 5% -> 100%の制御
for(duty=50; duty<=1000; duty++) {
CCPR1L = duty / 4; // 上位8ビット
CCP1CONbits.DC1B = duty; // 下位2ビット
__delay_ms(1);
}
// 100% -> 5%の制御
for(duty=1000; duty>=50; duty--) {
CCPR1L = duty / 4; // 上位8ビット
CCP1CONbits.DC1B = duty; // 下位2ビット
__delay_ms(1);
}
}
// 以下の命令は実行されない
return;
}
// 割り込み関数
void __interrupt() isr(void)
{
// 設定時間を表現するために現在の設定時間を
// LEDの点滅回数で表現する
__delay_ms(800);
RA5 = 0;
__delay_ms(500);
for( unsigned char i=0; i<timerValue; i++) {
RA5 = 0;
__delay_ms(200);
RA5 = 1;
__delay_ms(200);
}
RA5 = 0;
__delay_ms(800);
RA5 = 1;
// timerを最初から開始する
timerCount = timerValue;
// 割り込みフラグをクリアする
IOCAF3 = 0;
}
更新履歴
日付 | 内容 |
---|---|
2017.10.4 | 新規投稿 |
2018.12.2 | プログラムテンプレートをMPLABX IDE v5.10のものに変更 |
2019.2.8 | 割り込み処理関数宣言をXC8コンパイラVersion2.00以降の書式に変更 |
unsigned char timerCount; // 現在のタイマー残り時間(main関数ではこの値を減らしながらタイマーカウント。割込み処理関数では呼ばれたらtimerValueに戻す)
と書かれていますが、「完成した割り込みプログラム」のどこに書かれているのでしょうか。
どこにも見えませんが?
ご指摘どうもありがとうございました。
早速表示を修正いたしました。ご確認いただければと思います。
原因ですが、このサイトはWordPressを使用しており、仕様が変わったようでソースコードが正しく表示されなくなってしまいました。記事数が多いため一通り変更することが困難で、ご指摘いただいた記事をその度に修正しております。
ご迷惑をおかけしました。