今回は電源関連の回路の作成です。
この記事は更新済みです
現在、PICマイコン電子工作入門実践編シリーズの記事内容を最新の情報に合わせて、2025年9月までを目標に全面的に更新しています。
更新の理由は次のとおりです。
- 記事で使用している部品の中に、現在では調達できない部品があるため
- 記事内容に古い記述があるため
- 掲載している天気予報プログラムのアルゴリズムを改善するため
更新期間中は、新旧の記事間で一部内容に矛盾が生じる可能性があります。 ご不便をおかけいたしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
なお、更新済みの記事には冒頭に「この記事は更新済みです」の表示をしております。
引き続き、よりわかりやすく、役立つ情報を提供できるよう努めてまいります。 今後ともよろしくお願い申し上げます。
特定の電圧をつくる
今回製作する回路では、各部品の動作電圧を考慮すると3.1V〜3.6Vの範囲内の電源が必要です。
この範囲の電圧は、電池の組み合わせで作ることは難しいですよね。
仮に電池の組み合わせで作れる電圧の場合だとしても、問題が発生します。
例えば3Vの電圧が欲しい場合、使い捨ての乾電池は1本1.5Vですので、2本使用すれば3Vが得られます。
一見問題なさそうですが、電池は使い始めは高めの電圧で、使っているうちに電圧が下がってきます。具体的には、使い捨て乾電池の場合、未使用状態では1.6Vぐらいありますが、使っているうちに1.4Vぐらいになってしまいます。
安定した特定の電圧が欲しい場合、このような理由で、電池を電源として使うのは無理そうです。
今回必要な動作電圧は3.1V〜3.6Vですので、この電圧範囲に収まる安定した電圧の電源が必要になります。
そこでこの記事では、安定した特定の電圧を作る回路を作成していきます。
また、今後ご自分で何かを製作される場合に特定の電圧が必要になった時のことも考慮して、回路の注意点も詳しく説明します。
ところで、基礎編と応用編では電池ボックスをそのまま電源として使っていましたが、そのような使い方で問題なかったのでしょうか?
PIC12F1822は動作周波数として1MHzを設定していました。1MHz動作の場合、データシートによると電源電圧は1.8V〜5.5Vの範囲であれば動作します。
また、PIC12F1822に接続しているLEDやブザーはある程度の電圧(3V程度)があれば十分動作します。
基礎編と応用編の回路では、電源電圧の多少の低下があっても動作上は問題なかったので、電池ボックスの4.5Vまたは5Vの電源としてそのまま使用していました。
それでは、特定の安定した電圧を生成する回路を検討していきましょう!
特定の電圧を生成する電子部品
特定の電圧を生成する電子部品はいくつか種類があります。
今回は、その中でも安価に入手できる「3端子レギュレーター」という電子部品を使用します。
最初にこの「3端子レギュレーター」の働きから確認していきましょう!
3端子レギュレーターの働き
「3端子レギュレーター」は、「定電圧レギュレーター」や「シリーズレギュレーター」などとも呼ばれますが、いずれも同じ製品のことを指しています。
3端子レギュレータは、概念的には以下のような動作をする電子部品です。
3端子レギュレーターには「入力」と「出力」があり、出力電圧より高い電圧を入力に加えると、出力に一定の電圧が出力されます。
例えば今回使用する3端子レギュレーターの場合、入力に4V〜30Vの電圧を加えると、入力電圧にかかわらず出力の電圧は3.3Vになります。
入力電圧が5Vの時も10Vの時も、出力電圧は3.3Vになる、というちょっと不思議な電子部品です。
実践編では、基礎編と応用編で使用してきた4.5Vまたは5Vの電池ボックスの電源を入力電圧とします。
電池ボックスの電圧が徐々に下がってきたとしても、3.3Vの安定した電圧が得られることになります。(電池切れで4Vを切った場合は3.3V出力は保証できませんが…)
3端子レギュレーターの外観
「3端子レギュレーター」は次のような外観の部品です。

「3端子レギュレーター」は名前の通り3つの端子(リード線)があります。
画像の部品は全て出力電圧は3.3Vです。違いは出力電流で、大きい電流が必要なほど部品が大きくなっています。
画像の部品以外にももっと少ない電流(50mA)の製品もあります。
今回製作する回路では50mAでも問題ありません。ただ、10個まとめ売りのため余ってしまいます。そこで、他の回路でも使う機会もあるかもしれませんので、余裕のある100mAの製品にしました。
「レギュレータ」は日本語では「調整器」の意味ですが、他の分野でも使われているので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。
たとえばスキューバダイビングでは空気が充填されたボンベを背負って海に潜りますが、ボンベの空気は高圧ですのでそのまま吸うことはできません。そのため「レギュレータ」という装置で圧力を落としてからその空気を吸っています。このように「レギュレータ」は電圧や空気圧などを調整する製品で使われている用語です。
3端子レギュレーターの端子
3本の端子は、「Vin」「Vout」「GND」という名前が付いています。「Vin」は入力、「Vout」は出力、「GND」はグランド(電源のマイナス側)という意味です。
基本的な使い方は、以下のように「Vin」に電源を接続すると、「Vout」に特定の電圧が出力されます。
これはあくまで基本的な機能の説明で、実際には追加の部品が必要になります。
実際の回路については後半で説明します。
さまざまな3端子レギュレーター
ところで、上の画像の製品の出力電圧は3.3Vですが、他の出力電圧の製品はあるのでしょうか?
実はよく使用される電圧は一通り製品化されています。以下のサイトは秋月電子通商さんの3端子レギュレータ製品のページです。
このページを見ると、「1.8V」「2.5V」……などいろいろな電圧が用意されています。
また、同じ電圧でも出力電流が異なる複数の製品があります。
でもこの中に欲しい電圧がない場合、どうしたらいいのでしょうか?
その場合、「可変型」の3端子レギュレータを使用します。
例えば次の製品では、出力電圧を1.2Vから37Vまで自由な値に設定できます。
可変三端子レギュレーター 1.2~37V100mA LM317L
となると、ちょっと疑問が出てきませんか?
このような可変型の3端子レギュレータがあるのであれば、とりあえずこの製品を買っておけばよさそうですよね。だって、1.2Vから37Vまで好きな値に設定できるのであれば、3.3Vが必要なときは3.3Vに設定すればいいですし、他の電圧が必要になった時でも、この製品を持っていればその電圧に設定して使えばいいですし。
「固定電圧」の3端子レギュレータと「可変型」の3端子レギュレータではそれぞれメリットデメリットがあります。
可変型の3端子レギュレータは、出力電圧を設定するために追加の回路が必要になります。そのため、可変型では出力電圧が自由に設定できるのはメリットですが、追加の回路が必要になる、というデメリットがあります。
当然ながら、固定電圧の3端子レギュレータは、可変型に必要な追加回路は必要ありませんが、出力電圧は固定になってしまいます。
3端子レギュレーターの概要がわかったところで、実際の使い方の説明に進みましょう。
3端子レギュレータの使い方
3端子レギュレーターを使った回路を作成する場合、追加の部品が必要になります。
それは、「3端子レギュレーターを安定的に動作させるため(発振を防ぐため)」と「ノイズの影響を軽減するため」です。
これらの対策を行うために、「コンデンサ」を使用します。
コンデンサには多くの種類、容量がありますが、必要なコンデンサは3端子レギュレーターごとに異なります。
そのため、入手した3端子レギュレーターのデータシート(仕様書)を確認する必要があります。
なお、データシートは英語で書かれていることが多いので、そのような場合はAIに聞くと良いと思います。
今回使用する3端子レギュレーターでは、次のような1μFの積層セラミックコンデンサが推奨されています。

データシートでは、1μFのコンデンサを「Vout」と「GND」端子の間に接続するように書かれていますが、ノイズの影響を低減するために、追加で「Vin」と「GND」の間にも接続しても良い、と書かれています。
そこで、今回は次のように3端子レギュレーターにコンデンサを接続して使用することにします。

今回はこの回路の通りにブレッドボードを組み立てますが、使い方によってはさらに注意が必要なことがあります。
追加の注意点については、次回の記事で補足としてまとめます。
電源系の回路作成
3端子レギュレーターの使い方がわかりましたので、電源系の回路を作成していきましょう!
回路作成は次の順番で進めます。
- 電池と3端子レギュレーターで3.3Vを作る回路
- PICマイコンへの電源供給回路
- PICマイコンのパスコン接続
それでは順番に回路図を設計していきます。
❶ 電池と3端子レギュレーターで3.3Vを作る回路
データシートに沿って、次のように作成します。

電池ボックスの電圧は4.5Vまたは5Vですが、この回路で3.3Vの電圧を得ることができます。
❷ PICマイコンへの電源供給
3.3Vの電圧が生成できましたので、PICマイコンの電源ピンに接続します。
PIC16F18857は、VDDが1ピン、VSSが2ピンあります。
VDDを3.3Vのプラス側、VSSをマイナス側に接続すればOKです。

❸ PICマイコンのパスコン
PIC12F1822の時と同様に、パスコンを接続します。
VDDとVSSピンの間に0.1μFの積層セラミックコンデンサを接続します。
本来でしたら、VSSが2ピンありますので、2個接続した方がいいと思いますが、今回は19番ピンと20番ピンの近くに1個接続することにします。

ところで、部品数は少ないのに、なんだか線が目立ち過ぎですよね…!
この先、この3.3Vの線をセンサ2個とLCDモジュールにも接続しますが、この調子で電源接続線を描いていたら、ゴチャゴチャしてくるのは目に見えています。
そこで、PIC12F1822の時と同様に、電源接続部分を簡略化します。

3.3Vのプラスの線は赤のように、マイナスの線は青のように表現します。同じ色の表現は接続されていることを意味しています。
この先、センサやLCDモジュールを接続する際、3.3V電源にはこのように接続します。
これでPICマイコンの電源関係の回路作成は終わりました!
3端子レギュレータの回路を設計する際に必要な注意事項などは次回の補足記事にまとめます。
更新履歴
日付 | 内容 |
---|---|
2018.3.24 | 新規投稿 |
2025.7.3 | 三端子レギュレーター部品変更に伴う回路図変更 |
3.3VとGND間に47uのパスコンを接続していますが、PICのVDDとVSSにも0.1uのパスコンが必要になりますか?
例えば、3.3VとGND間の47uのパスコンを47.1uにしたら、PICのVDDとVSSの0.1uのパスコンが不要になりますか?
いや、接続距離が関係するのかな??と自分の中でも理解不十分で質問させていただきました。
キャップさま、
ご質問どうもありがとうございます。
いろいろ疑問を持ちながら進められていてすごいです! 実はこのコンデンサはよく考えると不思議なんですが、この入門シリーズではここまで疑問に思われる人はいないかな、と思ってさらっと説明してしまいました。
質問いただきましたので、コメント欄で言葉だけになってしまい申し訳ありませんが詳しく説明します。
3.3VとGNDの間にすでに47uのコンデンサがあるのに、なんでわざわざ0.1uという小さい容量のコンデンサを追加する必要があるのか、よく考えると不思議ですよね。これには2つ理由があります。両方ともノイズの特性によるものです。
ひとつ目は、キャップさまがお察しいただいているとおり、距離の問題です。ノイズは電気を通すものであればどこからでも入ってきます。PICマイコンのノイズ軽減のためにパスコンをつけるわけですが、PICマイコンのVDD/VSSとコンデンサ間の距離が長いと、その間の電線にノイズが入ってきてしまいます。3端子レギュレータの出力側のコンデンサはPICマイコンから距離が離れて配置しますので、その間の配線からノイズが入りますので、ノイズ対策としてPICマイコンのVDD/VSSのすぐそばにパスコンは必要になります。
ふたつ目は、電解コンデンサはそれほどノイズ対策に有効ではないためです。電解コンデンサはたくさんの電気をためて電圧を安定化させるのが主目的になります。ここからは電子回路の詳細な説明がないと完全には理解できないのですが、簡単に説明すると、電解コンデンサと積層セラミックコンデンサはノイズに対する特性が異なっていて、電解コンデンサは電気を貯めることは得意なのですが、ノイズ信号に対しては除去できる能力がほとんどありません。
なお、3端子レギュレータのノイズ対策としてもっとしっかりやる場合は、出力側の電界の隣に0.1uの積層セラミックコンデンサを接続する場合もあります。(それぐらい電解コンデンサはノイズ除去の目的は果たさない、という感じです)
なおコンデンサの容量ですが、端数の容量のコンデンサはなく、1, 2.2, 3.3, 4.7, 6.8の数字を10倍したり10分の1にした値のみが用意されています。例えばこれらの数字を10倍すると、10, 22, 33, 47, 68ですので、47uであれば、次の数値は68uになります。